飲食店の排水から油脂分を除去してくれる「グリストラップ」。
いったい、どういったしくみで機能しているのでしょうか?
その構造と、各部材の役割を説明していきます。
グリストラップは油脂を回収する装置
まず一番最初に、グリストラップの機能をかんたんに表現した図をご覧ください。
図の左側から、水と油脂分が混ざり合った状態の厨房排水が流れてきます。
その排水がグリストラップを経由すると、水と油脂分が引き離され、油脂分だけがグリストラップ内に捕獲・回収されます。
そして浄化されたキレイな排水だけが公共下水に流れていく、というしくみになっています。
いってみれば、油脂分のフィルターとしての役目を果たしてるんですね。
グリストラップはどのような原理で油脂分だけを回収しているのでしょうか。
グリストラップの基本原理
グリストラップは「あるひとつの性質」を利用した設備、ということができます。
その性質とは「油は水に浮く」ことです。
油の方が水よりも軽いんですね。
この物理的な性質をとことん利用してやろう、という先人の知恵で生まれた設備がグリストラップなのです。
そう疑問に思われたかもしれません。
突然ですがここに、水槽があると想像してください。
水が入っています。
さて、この上からサラダ油を垂らしてみましょう。
どうなるでしょうか?
油は水に浮く性質があるので、やがて水面にサラダ油が浮いて集まってきます。
では、「この水槽からキレイな水だけを排出してください」といわれたらどうしますか?
油は水面に浮いています。
しかしそれに対して、水中はどうですか?
油分がほぼ無く、真水に近いのではないでしょうか。
つまり、水槽の中間部分から水を抜きだせる仕組みがあれば、キレイな水だけを排出できますよね。
ずいぶんと回りくどい説明をしてしまいましたが💦、グリストラップはこの考え方を実現させるための設計がされているんです。
では次に、グリストラップが具体的にどのような構造になっているのかを見ていきましょう。
グリストラップの基本構造
実際のグリストラップは、下図のような構造になっています。
(上の図は横から見た断面図、下はグリストラップを真上から撮影した写真です)
3つの部材があることにお気づきだと思います。
これらの部材こそが、「グリストラップをグリストラップとして機能させている要(かなめ)」ということができます。
受けカゴ
厨房からの排水は、まず最初に「受けカゴ」に流れ込みます。
篭(かご)、バスケットと呼ばれることもあります。
目の粗いザルのようになっており、野菜くずやゴミなどの固形物をここで回収します。
水分だけが目の間を通り抜け、流れ出ていきます。
スライド板
「スライド板」は、堰止め(せきどめ)の役割をはたします。
上下にスライドして抜き差しできるので「スライド板」と呼ばれます。
「仕切り板」と呼ばれることもあります。
厨房から流れてきた排水には、水の勢い(水流)があります。
そこにスライド板が「障害物」として立ちはだかることで、水流を停滞させ、水の勢いを弱めます。
グリストラップ内での滞留時間を稼ぎ、水と結びついている油脂分を効果的に分離させ、浮上させることができます。
排水口(トラップ管)
受けカゴとスライド板を経由した排水を最後に待つのが、「排水口(トラップ管)」です。
断面図を見ていただけると分かるように、グリストラップの水中から排水を引き込む形になっています。
こうすることで、表面の油脂分はそのまま放置し、水中の無害な水だけを排出するしくみになっています。
「トラップ(罠)」という名前がつけられた理由がよくわかりますね。
ちなみに左の「やまね」の写真は「ネズミ」ではなく「リス」となっております…
グリストラップのしくみ
グリストラップの構造と部材の役割はなんとなく分かっていただけましたでしょうか。
最後に、実際の排水の流れを表した図をご覧ください。
厨房からの排水は、まず受けカゴで生ゴミ等が捕獲されます。
次にスライド板という障害物の下をくぐり抜ける形で2槽目にたどりつき、そこでは油脂分だけが水面に浮上させられます。
2枚目のスライド板をくぐり抜けるときには、油脂分の割合はかなり少なくなっています。
そして最後に、トラップ管によって水中のキレイな水だけが排出されます。
グリストラップとは、このようなしくみになっています。
もうご理解いただけていると思いますが、3つの部材はそれぞれ、なくてはならない重要な役割をもっています。
・受けカゴがなければ、ゴミなどの異物がグリストラップ槽内に流れ込み、排水管を詰まらせるかもしれません。
・スライド板がなければ、「水と油脂分を分離させる」というグリストラップの機能を充分に発揮できません。
・トラップ管がなければ、せっかく水面に浮上させた油脂分が流出してしまいます。
グリストラップの存在意義は、「排水詰まりの予防」と「下水環境の保全」です。
部材の役割を知って、グリストラップを正しく機能させましょう。
グリストラップをよく知らなかった方にも参考になればうれしく思います。
しかし図やイラストを描くのってむずかしいですね…。素人なので完成まで2日かかりました💦