グリストラップが存在するのには、理由があります。
役に立つこと、メリットがあるから設置されているのです。
この記事では、グリストラップの存在意義を説明します。
グリストラップは「マスク」のようなもの
グリストラップはなぜ存在するのでしょうか?
「グリストラップとは何だろう?3分でざっくり理解する【入門編】」の記事で、グリストラップは、人間がつける「マスク」のようなものだと例えました。
マスクは、それをつけることで花粉やホコリなど人間にとって有害な物質をガードしてくれます。
おなじように、グリストラップは油脂分や生ゴミなどの、下水へ流してはいけないものをガードしてくれます。
では、もしグリストラップが存在しなければ、どういうことになるでしょう?
それを想像してみることで、グリストラップの存在理由を考えてみたいと思います。
もしグリストラップが存在しなかったら…
この世界に、もしグリストラップが存在しなかったらどうなるでしょうか。
すこし、想像してみます。
日本中の飲食店からグリストラップがなくなったとしたら…
たとえば、ラーメン屋で、飲み残されたこってりスープを流したり…
ステーキ屋で、油ギトギトの食器を洗ったり…
そんなことは飲食店では日常茶飯事ですよね。
これらがそのまま店舗の排水管へ、さらにその先の下水管まで流れこんだとします。
どうなるでしょうか?
おそらく、いずれ店舗の排水詰まり(油汚れが原因)が起き、営業に支障をきたすことになるでしょう。
そして、公共下水道には大量の油脂分が日常的に流れ込むことになります。
いまの時代は下水処理場が整備されており、浄化能力も高くなっています。
とはいえ、有害な排水の流入が少ないに越したことはありません。
それに、下水処理場にたどり着くまでの下水管内に油脂汚れが付着して、少しづつ大きく固まっていきます。
万が一公共の下水管が詰まったら、大変なことになります。
グリストラップがあることで、お店の正常な営業と、公共下水道の環境を守っているのです。
しかしグリストラップは万能ではない
グリストラップの重要性は理解していただけたと思います。
しかし、グリストラップが決して万能で完全なものではない、ということもご説明しておきます。
飲食店や調理施設に設置されているグリストラップですが、実際には、油脂分などを100%除去してくれるとは限りません。
お店の排水量にたいしてグリストラップの容量が小さかったり、定期的な清掃がされていない状態だと、油脂分を回収しきれず下水管まで流出してしまうことがあります。
もちろん設置されていない状態に比べたらあった方がはるかにマシです。
しかし、本来の性能を発揮するためには、適切な維持管理が必要となってきます。
まず、グリストラップを設置する際は、適正容量(サイズ)を選ぶこと。飲食業種や客席規模などに応じて目安が定められています。
次に、グリストラップのバキューム清掃を定期的に行うこと。内部の油脂汚れ、底にたまったヘドロをすべて吸引することで、グリストラップの油脂回収性能を回復することができます。
メモ
エアコンのフィルターを放置するとホコリが積もって空気を吸わなくなりますよね。それと同じようにグリストラップも汚れが積もって水の通りを悪くしていくんです。
それにくわえて、グリストラップの部材が破損しておらず、しっかりと機能していることも求められます。(「グリストラップの構造としくみ」を参照)
せっかくグリストラップをつけたのですから、しっかり働いてもらいたいものです。
グリストラップを目の敵(かたき)にしないで
グリストラップの清掃作業員をしていた立場からの印象に過ぎないかもしれませんが、グリストラップの存在を「好意的」にとらえている店舗スタッフさんは、あまり多くないようです。
特に、厨房の現場で働く方にとっては、
- くさい
- きたない
- 詰まる
- 掃除が大変
- 業者にたのむとお金がかかる
という面があり、これらのネガティブなポイントだけをあげると、それもうなづけます。
自分も、もしグリストラップの清掃なんて仕事をしていなかったら、「うざい存在」とでも思っていたかもしれません。
しかし、この仕事をしていくうちに、グリストラップの存在意義を少しづつ意識するようになりました。
中身をよく知れば、そんなに悪い奴とも思わなくなるんじゃないか、と思っています。
グリストラップのことを、今までより「すこしだけ好意的に」見てくれませんか?
きっとあなたにも負けないくらい、働きものなのですから。